日本で反マスク運動?

日本でも反マスクデモ?

日本で反マスク抗議活動開催されていると知り驚いた。しかもそのネーミングは『クラスターフェス』という。

ドイツ各地でこのところ、人間の尊厳をはじめとする国民の基本的権利を保証する『基本法』がコロナ対策で侵害されていると主張し、Querdenken(異なる考え方)をスローガンに数千人を動員してデモが開催されている。

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出典 https://www.zeit.de/video/2020-08/6179735909001/hygienedemos-auch-in-dortmund-protest-gegen-corona-massnahmen  タイトル「ドルトムントでも反コロナ対策抗議」

これを組織しているのはWiderstand 2020(レジスタンス2020)というグループで、心理学者・弁護士・耳鼻咽喉科医師の3名によって結成され、ネットを通して呼びかけ、同グループによるとすでに10万人が登録しているそうだ。例えば、この医師は、「コロナといっても風邪と同様で、パニックを煽っている」と主張し、ロックダウンや制限を強要するのは行き過ぎだと批判している。弁護士は、「コロナのために十分にテストが行われないうちに予防接種を行うのは危険すぎる」と主張している。取り上げるテーマが非常に限定されるため、これは政治団体というよりは、今回のコロナでの政府の対策に対する反対団体と位置付けられるらしい。このデモに参加している人たちは、将来に対するやり場のない不安を抱えている人たちだ。右寄りのポピュリズム(大衆扇動的政治)に同調する人たち、予防接種そのものに反対する人たち、陰謀説を信じる人たちなどがその主な賛同者だ。現政治・メディア・知識陣を疑問視し、反旗を翻そうとしている。

日本の場合はこういう状況とは異なる事情がある。そもそも、ドイツでも他の国でも、コロナの感染拡大を防ぐために、実際に強制力をもってこれらの基本的人権が制限されてきている。日本では、強制力をもたずに政府や都道府県から要請をする形で、基本的にそれぞれが自主的に自身の行動を制限してきた*1)。このコロナの対処が難しいのは、本人が無症状であっても感染を広げてしまう点である。しかしながら経済活動も続けていかねば、経済的に破綻してしまう。そんな中で、各国が苦渋の選択を取っている状況で、どの方策が正解なのかは今まだ分からない。例えば、スウェーデンは多くのヨーロッパの国と違って外出制限を実施せず、ある程度国民が感染してしまって免疫を確保すれば収束に向かうというシナリオを選択した異例の国だ。ところが、現時点まで出されてきた知見では、コロナに感染しても軽度の場合、抗体が少なく再び感染する恐れがあるという。スウェーデンでも、高齢者が感染すると重症化する可能性が高いため、高齢者との接触制限は呼びかけていたが、対策が甘かったようで、一時重傷者が増え、その結果、他国と比べて死亡率が圧倒的に高く、これまでに5770名が数えられている*2)

日本は最初にコロナの感染を受けた国で、検査体制も整っていない中、初期段階では限定的な検査を行い、完全に感染経路を徹底的に潰すという作業に取り組んで、ある程度の成功を収めていた。当然ながら完全にはコロナを封じ込めることはできず(これはどうやらロックダウンを行ってきた国々でも同じで現在感染者数が増えてきている)、緊急事態宣言が解除されて移動が自由になり、しばらくたった今は感染拡大中だといえる。それでも医療が逼迫しなければどうにか凌げるだろう。限られた数の集中医療や入院ベッドを本当に必要とする人たちに提供できるように、軽症者の収容施設を増やしたりしてきたはずである。残念ながら検査で分かるのは一定のウィルス量が検出されなかったという事実で、感染してから1日目であれば、ウィルス量が少なくて検出されない可能性も残るし、偽陰性も排除できないのが現実である。それでもかなり高い精度で陽性の人をスクリーニングして隔離して感染拡大の防止を可能にしてくれる。ところが後から別の経路で感染してしまうとなるとせっかく陰性証明も元も子もない。

8月9日、渋谷のハチ公前で、今年7月の都知事選に立候補した平塚正幸さんの呼びかけで、マスクの着用に抗議する人たちが集まった。それどころか50人くらいの集団でマスクをしないで山手線に乗り込むという行動をとったという。(!?)

このような反コロナ対策の動きに関して、ドイツでは神学者のマーゴット・ケースマンさんが同じ9日に以下の発言 *3)をしていて本質をついていると思うので引用させてもらう。

自由というのは、行使する自分自身の権利だけではありません。民主社会ではそれは他の人の自由についても一緒に考える義務でもあるのです。ですからデモを行う人は他の人との共同生活がどうなるか説明すべきです。ただ何かに反対を唱えるだけでは簡単すぎます。自身だけのための自由を要求する人は、自由を乱用しているに過ぎません。

マスクの是非が世界で議論されるずっと以前から日本では普通に風邪を引いたらマスクを着用してきた。その理由の一つは、自身の予防よりも、まず他人にうつすのを防ぐ意味があったと思う。マスクの着用は多くの人にとっては、多少の自由の犠牲でしかないと思う。ただ、大部分の人がそう考えていても、一部の違う考えの人がいて、それで多くの人の努力が台無しになって、間接的に莫大な費用も発生する。放っておけばよいという話ではない。そうであれば、自主性に任せるだけでなくてこの事態におけるルール決めがあっても支障ないと思える。

2020年8月12日

*1) とはいっても、全くないわけでもなく、例えば、水際対策として海外から入国した人は検査結果が陰性であっても2週間自主隔離しなければならず、滞在先までの移動手段(公共交通手段はNG)、滞在先や連絡先を申告しなければならない。これには虚偽の申告をした場合には検疫法第36条に基づき50万円までの罰金または6か月までの懲役が課されることがありますと記載されている。

*2) 8月12日までに5770名が死亡している。人口が1020万人であることを考えるとかなり高い比率になる。ちなみに同じ北欧の隣国、デンマーク、フィンランド、ノルウェーはそれぞれ人口500万人強であるが3国合わせても死亡者数は910名である。

*3) https://www.domradio.de/themen/%C3%B6kumene/2020-08-09/die-freiheit-der-anderen-mitdenken-kaessmann-sieht-bei-corona-demos-missbrauch-des-freiheitsbegriffs より抜粋。

参照